国際ロータリー第2720地区 熊本・大分

グローバル奨学金報告書 河村 陽一郎(2020年12月)

2021年01月12日

マサチューセッツ総合病院 脳神経外科
河村 陽一郎

 

明けましておめでとうございます。元旦、近くの公園からボストン方向から登る日の出を眺めながら、家族とささやかに新年を祝いました。
昨年の元日は日本人か中国人くらいしか研究室で見かけませんでしたが、本年は国籍に関わらず、多くの人が出勤しており、3月以降の自宅隔離で失った研究期間を取り戻すべく、年末年始の休暇を返上して皆が必死に働いていました。

 

勤務するマサチューセッツ総合病院ではファイザーやモデルナ製のワクチン接種が開始されました。まずは集中治療に関わる医療スタッフやCOVID-19研究従事者から、入院業務に携わるスタッフ、外来関係者、我々研究者と段階的に進められています。同僚にも接種済みの者がいますが、今のところ目立った副作用は聞きません。長期的に見て、どれほどの効果があるのか今後の報告を待たねばなりませんが、とにかく収束につながればと祈るばかりです。
日本においても1日当たりの感染者数は増加の一途と聞き、心配しております。居住するマサチューセッツ州は人口680万程度ですが、これまでに42万人以上が陽性と診断され、1月10日付で7400人/日の感染者数です。指数関数的に増える感染症ですので、何をきっかけに爆発するか分かりません。欧米の感染状況を鑑みるに、民主国家の政策では押さえ込むのは難しく、やはり個人の努力が大いに影響するようです。国家が何をしてくれるかではなく、自分が何をできるか、何度も思い出しながら責任ある行動につとめていきます。
早くこの暗闇を抜けて、世界の皆様と喜びを共有したいと思います。このスピードで新型コロナウイルスを制圧できるのであれば、その後に多くの研究資金が未解決の感染症研究に向き、いくつかの感染症の新規治療法が開発されるのではと期待しております。また、今後も新規感染症の発生は予想されることから、本経験は検証の上でしっかりとまとめ、後世の指針にしていかなければなりません。

 

このパンデミックは生命や経済のみならず、非感染者の精神、政治と影響し続けています。
ワシントンの議会にトランプ大統領の支持者である暴徒が侵入し、民主主義で世界をリードしてきたアメリカが醜態をさらしました。今回の大統領選挙は価値観の分断が明確となりましたが、デマを信じ、話ができない集団がいることもはっきりしました。SNSなどを通じて、日本にも和訳されたデマを信じ、不正選挙を頑なに主張し、バイデン氏の当選を認めないという意見があると知りました。トランプ大統領の中国への強硬な姿勢 (パフォーマンス)や安倍前首相との良好な関係が、一部の日本人からの人気の要因のようです。
しかし、トランプ氏の大統領就任時の混乱は今なお思い出されます。研究目的の留学生はトランプ氏の大統領任期中には、大統領令の発行により振り回されたのも事実です。
データに基づく論理的な思考と、結果の検証は本件においても、非常に大切だと再認識させられました。異なる価値観に対する“思いやり”という名の想像力も必要でした。

 

脳腫瘍研究はいくつかのプロジェクトでまとめに入りました。残念ながら第一著者としてのテーマは期待を裏切る結果となりましたが、第二著者として年内に2-3本は形になる予定です。
また、これまで研究してきたG47∆が第一三共株式会社により、悪性脳腫瘍である神経膠腫に対する治療法として、販売申請承認がなされたようです。嬉しい反面、研究してきたことから、そんなに甘くない事も分かっています。私の杞憂を打ち消すくらいの良好な成績が上がり、一人でも多くの患者さんの治療に役立つことを祈ります。

 

ロータリー財団の皆様のご理解で留学生活を継続できていることを、心より感謝申し上げます。また、グローバル奨学生として各地で頑張る皆様の姿にも勇気づけられています。

2021年1月10日

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