国際ロータリー第2720地区 熊本・大分

ロータリー財団奨学生中間報告 山崎 智美(2017 年9 月18 日~12 月17 日)

2018年01月17日

2017-2018 年度グローバル補助金奨学生
山崎 智美

 

第1回中間報告
(2017 年9 月18 日~12 月17 日)

1. 基本情報

カウンセラー(派遣側) 林明様(熊本江南ロータリークラブ)
カウンセラー(受入側) Mr. David Hirst(Rotary Club of Pocklington & Market Weighton)
教育機関・専攻分野 University of York(英国)、
MA in Post-war Recovery Studies(修士過程)

 

2. 学業面での成果

私の専攻する政治学部(Department of Politics)の戦後復興学コース(MA in Post-war Recovery Studies)では、それぞれの科目につき、3つのタイプの授業(①担当講師による講義、②セミナー、③外部講師による講義)が毎週行われます。①担当教師による講義(1時間)では、講師が毎週のテーマに関連する要点を整理してくれます。②セミナー(1時間半)では、コースメートとのディスカッションを通じて、①や事前に参考文献により得た知識、これまでの各々の体験談などを元に、テーマに関するの知見を広げ、掘り下げます。③外部講師による講義(2時間〜4時間)では、各週に学習するテーマの専門家による講義を通して、より立体的にテーマに関して学んできます。9月18日(月)〜12月2日(土)の秋学期では、以下の3つの必修科目を受講し、武力紛争の多様な側面や、それらに対して自身がどのように関わっていくかについて学びました。

 

2.1. 紛争への理解と対応(Understanding Conflict & Responses to Conflict)

この科目では、歴史、政治、経済、外交、法律、人道、軍隊など、様々な観点から武力紛争の原因や影響、それに対する国際社会の対応について学びました。個人的に特に興味深かったのは、国際人道法に関する授業です。憲法第9条で戦争を放棄している日本では、戦争は絶対悪であり、戦争が始まりは秩序の崩壊を意味する、といった考え方が根強い一方で、国際人道法は(戦争自体を禁止するのではなく)戦争時おけるルールを定め、戦争による被害を抑制することを目的としています。国民に選ばれた国会議員が法律を作り、施行された法律を全ての国民が遵守しなければならない国内社会とは異なり、現在の国際社会には、全ての国・人類に適用されるルールを制定できる世界政府のような機関は存在しません。現に、国際法の主要な法源である条約の適用においては、各国政府の自主的な加盟が前提にあり、したがって、非加盟国はその条約を遵守する義務を持ちません。そんな中、国際人道法には196ヶ国が加盟(国際連合の加盟国は193ヶ国)しており、普遍的に認められた国際的ルールといえます。現代における紛争の形態・傾向の変化に対応するため、国際人道法はどのように発展し、実際に活用されてきたのかを学ぶことで、マクロな視点から世界の紛争と国際社会の対応に関する理解を深めることができました。

 

2.2. 紛争の影響を受けた環境下でのフィールドリサーチ(Research in Conflict Affected Environments)

この科目では、紛争の影響を受けた地域での調査方法について学びました。一般的な社会学の調査とは異なり、紛争の影響を受けた社会での調査には様々なリスクが伴います。これには、研究者である自分自身の安全面に関わるリスクだけでなく、調査対象者の精神面に関わるリスクも含まれます。例えば、研究者が現地の文化や慣習、紛争の被害状況に関する十分な理解を持たないままインタビュー調査を実施した場合、紛争の被害者である人々にさらに精神的傷を負わせてしまう、Re-victimizationを引き起こす可能性があります。このようなリスクを軽減するため、研究者は現地に関する情報を事前に集めたり、インタビューの質問内容や発問の仕方に工夫をしたりする必要があります。授業では、担当講師による講義や、人道機関での経験を積んだコースメートとのディスカッション、その道の専門家である外部講師の体験談などを通して、Re-victimizationを防ぐための具体的な方策を学びました。以上のような調査対象者への配慮は、現地の人々と研究者との信頼関係の構築につながり、結果的には研究者自身の安全面でのリスクを軽減することにもなるため、紛争の影響を受けた社会での調査において重要な要素の一つです。この科目で学んだ、紛争の影響下での調査に伴う課題やその対策を、将来の自身の研究活動に生かしていきたいと思います。

 

2.3. フィールドトリップ

この科目では、11月18日(土)〜12月2日(土)の2週間、コソボを訪問し、当国の戦後復興と発展に従事する国際機関や現地政府、非政府機関(NGO)の職員の方々にお話を聞きました。毎日複数のミーティングがあり、かなり過密なスケジュールではありましたが、五感を通じて生の情報を得ることができ、自身にとって大変に貴重な経験になりました。コソボは1999年に終戦し、2008年にはセルビアからの独立を宣言しましたが、セルビア政府はこれを認めておらず、難民・国内避難民の帰還や紛争による行方不明者の捜索など、国内にも数多くの問題を抱えています。中でも、コソボに住むアルバニア人(多数派)とセルビア人(少数派)との民族対立は、コソボの戦後復興と発展を阻害する、典型的な紛争の負の遺産の一つです。コソボの北部に位置するミトロヴィツァという町では、この民族対立が顕著に現れており、セルビア人とアルバニア人は、イバー川を挟んでそれぞれ北と南に分かれて生活しています。さらに、イバー川の北側では、セルビア政府が運営する議会が、セルビアの法律に基づいた行政活動を行なっている現状です。このような環境下で人々がどのような課題を抱え、これに国際社会や現地政府、地域の団体がどのように対応しているのかを現地に腰を据えた人々から直に学ぶ中で、改めて現地に足を運ぶことの重要性を実感しました。

 

3. 受入ロータリーとの交流

自身の受入ロータリークラブであるRotary Club of Pocklington & Market Weighton は、ヨーク大学の東部に位置しています。このクラブのロータリアンである David 氏は、留学中の住居や空港から大学までの移動手段など、Eメールでのやりとりを通じて、渡航前より様々な相談に乗ってくれました。渡航後には早速、ヨークの市内および周辺の観光を計画してくれ、現地の歴史や文化に触れることができました。ヨークの歴史は深く、市内に多く残された城壁の中には、ローマ時代に作られたものもあります。これらの観光を通じて、ヨーク大学で学ぶ他の奨学生とも初めて出会い、市内のカフェでそれぞれの研究分野や将来について語り合いました。また、10 月10 日(火)には Rotary Club of Pocklington & Market Weighton の設立34周年記念ディナー(Charter Night)に参加する機会がありました。ここでは、多くのロータリアンの方々と出会い、イギリスの文化や Rotary Club of Pocklington & Market Weighton の活動、これまでに受け入れてきた奨学生との思い出など、様々なお話を聞くことで、楽しくも刺激的な時間を過ごすことができました。

 

4. 留学の様子(写真)

ロータリー財団奨学生中間報告(2017 年9 月18 日~12 月17 日)

キャンパスの風景

 

ロータリー財団奨学生中間報告(2017 年9 月18 日~12 月17 日)

市内の観光地であるヨークミンスター

 

ロータリー財団奨学生中間報告(2017 年9 月18 日~12 月17 日)

教授とコースメートとのディナー

 

ロータリー財団奨学生中間報告(2017 年9 月18 日~12 月17 日)

Charter Night の様子

 

ロータリー財団奨学生中間報告(2017 年9 月18 日~12 月17 日)

David 氏(左端)と Bronwyn 氏(右端)、他の奨学生と訪れたカッスル・ハワード

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