国際ロータリー第2720地区 熊本・大分

ロータリー財団奨学生最終報告書 山崎 智美

2019年01月17日

2017-2018 年度グローバル補助金奨学生
山崎 智美

 

帰国報告書

1. 基本情報

カウンセラー(派遣側) 林明様(熊本江南ロータリークラブ)
カウンセラー(受入側) Mr. David Hirst(Rotary Club of Pocklington & Market Weighton)
教育機関・専攻分野 University of York(英国)、
MA in Post-war Recovery Studies(修士過程)

 

2. 戦後復興学コースでの1年

 私がロータリーの奨学生として学んだ、ヨーク大学・政治学部の中にある戦後復興学コースは、私を含めた14人の学生と2人の講師によって構成されています。このコースでは「座学と実践をつなぐ」という目標の下、通常の授業に加えてフィールドトリップ(第1ターム)とワークプレイスメント(第3ターム)が必修となっています。

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コースメートとの手巻き寿司パーティー

 

9月18日〜12月2日の第1タームでは、武力紛争の原因・影響に関する授業を通じて紛争が持つ様々な側面やその捉え方について、また、フィールド調査に関する授業を通して紛争の影響を受けた地域での調査に伴うリスクや、それを踏まえて実際にどのように調査を計画・実施するかについて学びました。これらの科目から学んだことを受け、大学院での学びの集大成である修士論文研究では「難民」に関する調査・研究を行うという方向性が決まりました。また、2週間のフィールドトリップでは、旧ユーゴスラビアの一部であったコソボを訪れ、戦後復興・開発を先導する団体や組織の方々にお話を聞きました。セルビア政府との政治的な問題や紛争の負の遺産としてコソボに残された課題についての理解を深めると同時に、国際社会や現地の団体がどのように活動を展開しているかについて学ぶことができました。

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フィールドトリップ先でのミーティングの様子

 

1月8日〜3月9日の第2タームでは、国連や他の国際組織がどのように戦後復興・開発を進めているかについて、前タームでのフィールドトリップで訪れたコソボや他国の事例をもとに学習し、また、実際にそれらの復興・開発事業をどのように計画・実施・評価するかについて学びました。ここでは卒業後、国際協力関連の進路に直結する、実用的な知識やスキルを身に付けることができたと思います。

 

4月16日〜6月8日の第3タームでは、学生自身が見つけた団体でワークプレイスメントを行います。私はNSAMIZI-UNHCR Projectという、国連難民高等弁務官事務所(United Nations High Commissioner for Refugees:UNHCR)の事業実施団体で約2ヶ月間、広報担当として働きました。初めて訪れた難民居住区は、ビニールシートで作られた仮設住宅が規則正しく並ぶ難民キャンプのイメージとは異なり、土製でしっかりとした住居や商店の立ち並ぶ、活気あるコミュニティーという印象を受けました。一方で、人々の生活は決して楽なものではなく、いつ途切れるかわからない外部からの援助に依存した生活を送る人が大半でした。ここでの原体験により、政治的な迫害のほか、武力紛争や人権侵害などを逃れるために国境を越えて他国に庇護を求める人々、つまり難民の支援という卒業後の進路の方向性が定まりました。

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NSAMIZI-UNHCR Projectが運営する仕立屋の学校にて

 

修士論文研究では、ウガンダでのワークプレイスメント中に行ったインタビュー調査を踏まえ、ナキバレ難民居住区でのソーシャルキャピタルに関する調査・研究を行いました。具体的には、10ヶ国以上の異なる国々から逃れてきた難民が共存するナキバレにおいて、同じ部族・国籍の難民間(bonds)、異なる部族・国籍の難民間(bridges)、そして難民と政府・援助機関間(linkages)のソーシャルキャピタルに関して調査・分析を行いました。結果としてナキバレでは、多くの店は家族・親戚経営であることなどから、比較的強いbondsと弱いbridges、有志の難民による自助グループとUNHCRの活動が独立していることなどから、弱いlinkagesが見受けられました。UNHCRのような外部機関の支援にはいずれ必ず終わりがきます。援助の効果や持続性の観点から、将来は、このような自助グループと国際的な介入を結びつけるような援助の仕組みを発展させていきたいと感じました。

 

修士論文の提出後、10月1日〜12月31日までの3ヶ月間は、国際移住機関(International Organization for Migration:IOM)という世界的な人の移動(移住)の問題を専門に扱う国連機関のケニア事務所でインターンシップを行いました。配属されたMigration Management Unitでは、人身売買や密輸、テロなどに対抗するための国境管理能力の強化や自然災害の被害者に対する緊急支援の実施、安全で公正な労働移住の促進など、移住に関わる様々な分野での活動を展開しています。ここでの経験を通じて、国連機関がどのように活動を計画・実施・評価しているかや他の団体・組織と協力しているか、また、国連職員、とりわけインターナショナルスタッフとして働く上で必要な資質や能力についても学ぶことができました。

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IOMの同僚とのピザパーティー

 

3. 今後について

 1月18日の大学院卒業後は、Peace Winds Japanという国際協力NGOの海外事業部で働くこととなりました。原則2年以上の社会人経験が求められる国際協力の道に新卒で進めたことは、私のヨーク大学・戦後復興コースでの学びやインターンシップ等を支えてくださった皆様のおかげです。改めまして、これまでご支援いただいた2720地区の皆様、大変にありがとうございました。皆様への感謝の気持ちを忘れず、この1年の大学院生活で学んだことを活かしながら、世界の紛争予防/紛争解決に貢献できるよう、努めていきたいと思います。

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お世話になったRotary Club of Pocklington & Market Weightonの方々と

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