グローバル奨学金報告書 河村 陽一郎(2020年1月)
2020年02月17日
マサチューセッツ総合病院 脳神経外科
河村 陽一郎
新年早々の研究予算申請を控え、12月31日、1月1日と出勤する必要がありました。おかげで?普段とは違うボストンの大晦日、元日の様子を垣間見ることができました。普段は満員のレッドラインも人はまばらで、やはり有色人種の割合が高まります。研究室は、警備員を除き、日本人と中国人の研究者かヒスパニックの掃除係が働いているくらいです。クリスマスは閉じていた飲食店も元旦は通常営業していたようですが、日本人にとって特別な元旦はマサチューセッツではとても静かなものでした。いつもより少し早めに帰宅し、妻のお節料理、餅米を炊いて即席の餅を食べて、新年を祝いました。現地の人にとって感謝祭から続いたホリデイ・シーズンでしたが、1月2日から本格始動で、学校も研究室も通常運転となりました。
1月20日は”Martin Luther King Jr. day”は休日でした。居住するアーリントンは2月8日よりBlack History Month が始まります。アフリカ系アメリカ人が人口2%未満と少ない地域ながら、アフリカ系住民への差別、権利獲得の歴史をしっかりと学ぶ機会があります。どうして、土地を奪われたネイティブ・アメリカンに関する扱いが不十分な気がしますが、それはアメリカ全体のことなのか。とは言え、マサチューセッツはもう一人のカリスマ・アフリカ系アメリカ人活動家であるMalcom X と縁深い土地、しっかりと現地の空気を感じて来たいと思います。空気と言えば、全米は大統領選の真っ最中。ラジオやTVのコマーシャルも各陣営の広告が目立ちます。現職の弾劾裁判、大統領選の時期の留学という面白い経験をさせてもらっています。
さて、2月13日にホストのウィンチェスター・ロータリークラブのミーティングに参加しました。会場は地区の教会である”PARISH OF THE EPIPHANY (写真)”です。毎週木曜日に昼食を取りながらの会ですが、研究室のミーティングとも時間が重なるため、今回で2回目の出席となります。前回はポリオ撲滅についての取り組み、今回はVincent Dixon さんによる郷土の偉人 John Volpe についての発表でした。私も7月を目処に自分の研究内容を報告する機会を頂ける予定です。
(左) ロータリークラブ・ミーティング会場
(中) バレンタインデーに因んだ飾り付け
(右) ミーティング開始前
コロナ・ウイルスの流行、被害が世界中で話題になっていますが、米国でも同様です。ミーティングでも色々な方に日本の状況を聞かれました。マサチューセッツ州ではコロナ・ウイルスに関する情報を公開しています。これによると、マサチューセッツでも武漢からの帰国者に感染者が出たとのことですが、ヒトからヒトへの感染は報告されていません。ヨーロッパでは一部の国に中国人や日本人を標的とした差別があったように聞きますが、今のところ幸いにも差別を感じることはありません。対岸の火事ということもあり、冷静な方が多い印象です。東京オリンピックを控え、少しでも一早い収束と肺炎による死亡者が増えないことを祈るばかりです。インフルエンザも一時期は流行しましたが、日本みたいに学級閉鎖はありませんでした。その代わり、通学の是非はスクール・ナースの判断に委ねられます。日本に比べて、風邪でも出社・通学する人は少ない印象を受けています。
なかなか、ウイルスに対する風当たりが強い中、私はヘルペスウイルスやアデノウイルスを用いた腫瘍溶解性ウイルス免疫療法の研究に携わっています。最近、ようやく研究予算に目処がつき、マウス髄膜腫に対するウイルス療法を開始しました。従来の免疫不全マウスにヒト髄膜腫細胞を打ち込む方法と違って、ウイルス療法後の免疫応答を観察できるメリットがあります。最終的にはヒト化マウスを用いたヒト髄膜腫に対するヒトの免疫応答を観察したいと考えています。残り1年少し、どこまで形にできるか勝負の年となります。
(左) 元旦の朝、研究室側の駅からチャールズ川を臨んで
(右) 元旦の夕、近くの池で